【相棒season9】第1話・第2話「顔のない男」の見どころ解説

銃を持った警察官

二代目相棒・神戸尊の2シーズン目のスタートを飾る回です。

前シーズンの最終話では、神戸尊が特命係にやって来た本当の理由が明らかになり、ここからは「隠し事なし」の回となります。

暗く重い回の多いseason9ですが、そのスタートにふさわしい、後味の悪い回となります。

「顔のない男」の概要

放送日

2010年10月20日

主な出演者

徳重聡 津嘉山正種 近江谷太朗 阿部進之介 梅宮万紗子

相棒のレギュラー

杉下右京・神戸尊・たまき・伊丹憲一・三浦信輔・芹沢慶二・角田六郎・米沢守・大河内春樹・大木・小松・内村部長・中園参事官

脚本

戸田山雅司

監督

和泉聖治

「顔のない男」のあらすじ

謎の部隊が銃を構え、森や河を進行する中、極限状態に置かれた一人の若い隊員が、作戦中の爆破音により発狂してしまいます。あたり一面に銃を乱射する若い隊員と、撃たれて負傷する他の隊員たち。その様子を見たリーダーの男はおもむろに拳銃を構え、錯乱状態の若い隊員の額を撃ち抜きます…。

場面は変わり、都内の邸宅にて、人気女流作家の水元湘子(安藤麻吹)が殺害される事件が発生します。

現場に臨場した杉下右京は、整理された水元の取材資料のうち、最近のファイルがないことに疑念を抱きます。

最近の取材先として浮上したのは、豊日商社の笠井宏樹でした。笠井の妻(梅宮万紗子)の話では、取材内容は航空機の燃料による空港周辺の環境汚染であったといいます。

取材後、笠井宏樹は夜釣りでの事故で亡くなっていました。

事件の真相について、杉下右京は、水元の自死であると推理し、夫の吉野茂久(近江谷太朗)が殺人事件に偽装したことを見抜きます。特命係と捜査一課に問い詰められ、偽装を認める吉野。しかし、最近の取材資料のファイルについては心当たりがないようです。

杉下右京は自らの推理に疑念を抱き、神戸尊とともに、水元のアシスタントである岡崎のマンションを訪ねます。

ちょうどその時、一足先にマンションを訪問した男が、岡崎を殺害したところでした。男は、特命係の追跡を逃れて去っていきます。

その男は、水元の取材資料のファイルを持ち去った人物であり、かつて若い隊員を撃った元・SATの上遠野隆彦(徳重聡)でした。

「顔のない男」の見どころ

証拠を残さない犯人VS不倫夫

非常にシリアスなストーリーですが、出だしは、殺人の証拠を残さない犯人が自死を偽装し、それを被害者の夫が殺人事件に偽装し直すという珍事件から始まります。

夫は、自身の不倫を苦に妻が死を選んだと思い込んでしまい、それを隠すために殺人を偽装しました。

ストーリーの流れは、①自殺に見せかけた他殺が行われる→②現場を見て自殺だと思った夫が、他殺に偽装する→③杉下右京が偽装を見抜き、真相は自殺だという話になる→やっぱり自殺に見せかけた他殺で、真犯人が別にいる、という流れだね

②のとき、真犯人はびっくりしただろうね…

複雑なストーリーだけど、ドラマでは「真犯人」の影がちょいちょい映されてるから、流れはめちゃくちゃわかりやすかった!

黒幕は元与党幹事長・伏見享一良

事件の黒幕は、元与党幹事長の伏見享一良(津嘉山正種)。

伏見は、航空自衛隊、国際航空会社、豊日商事とで、航空燃料の横流しによる裏金作りを行っていました。

しかし、この不正を嗅ぎつけた作家の水元、取材元として協力した笠井(伏見の義理の息子)、そして水元から資料を郵送されただけのアシスタントの3名が殺害されてしまいます。

なぜ上遠野は伏見に協力したのか

最大の見どころは、元SATの上遠野隆彦(かどの・たかひこ)が、なぜ伏見の計画の実行犯となり、連続殺人を引き受けたかにあります。

かつて、過酷な実践訓練の中で、適正のない部下を射殺した経験を持つ上遠野。

自分の役割だと信じて行ったとはいえ、重い十字架を背負う結果になりました。

また、当時の現場を目撃した部下の一人である篠原孝介(阿部進之介)は、上遠野の射撃の腕前なら殺害せずに対処できたとし、上遠野を責めます。

上遠野の口から、故意であったかどうかの真相が明確に語られることはなかったものの、殺意を持って対処したことは十分にうかがえる状況でした。

しかし、上遠野の行動は、隊員の命を守るためのものであったと判断され、裁かれることはありませんでした。

贖罪の機会を失った上遠野は、精神的に追い詰められ警察を退職します。

そのような上遠野に接触してきたのが、伏見享一良でした。

伏見の政治信条は「一粒の麦、もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん。死なば多くの実を結ぶべし」。

自己犠牲や他者に尽くす大切さを説いた聖書の言葉ですが、伏見はこれを「大勢の人間の命を守るためなら、目の前の一人が命を落としても構わない」という過激な解釈のもと、信条としていました。

そのような伏見は、部下を射殺した上遠野の行動を、力強い言葉で肯定します。

このことが上遠野の心の拠り所になり、上遠野は伏見の殺人に大義があると信じて手を貸すことにしたのです。

杉下右京、説得に失敗する

すべてが終わり、伏見に死を選ぶよう命じられた上遠野は、それを承諾します。

しかし、上遠野は伏見の命令にしたがう中で、伏見が裏金づくりのために自分を利用していたことに気がついていました。

伏見が孫たちと過ごす遊園地で、伏見に銃を向ける上遠野。

すぐにSATに取り囲まれます。

狙撃されても構わないと考える上遠野ですが、杉下右京により、狙撃手の中にかつての部下である篠原がいることを知らされます。

杉下は、篠原に同じ十字架を背負わせてはならないと説得し、上遠野を投降させようとしますが、それを聞いた上遠野は、篠原の方を向き自ら死を選びます。

伏見を信じて、善良な人を3人も手に掛けてしまったのだから、もう限界だったんだろうね

後味の悪い事件

2話のエピローグで、上遠野に殺人を教唆した伏見享一良や裏金づくりに関わった人物は、無事に立件されることがわかりました。

しかし、上遠野が亡くなったことで、かなり後味の悪い事件となりました。

season9は「ボーダーライン」など、後味の悪い事件が多い気がするね…