相棒の北一幸とは、自分好みの女性を殺害し、その顔を切り刻むことに快楽を覚える連続殺人犯です。身勝手で残忍ですが、余命を宣告されてからは、共感した相手のために罪をかぶったり復讐に手を貸したりするなど、単なる殺人鬼としては語れない人物となっています。
今回は、相棒屈指のシリアルキラー・北一幸について解説します。
この記事は以下のエピソードの重要な内容を含みます。
・相棒14「陣川という犬」
・相棒15「ギフト」
北一幸のプロフィール
北一幸(きた・かずゆき)/演 野間口徹
生年月日
1977年6月28日(初登場時は38歳)
職業
職業は司法書士です。
「北司法書士事務所」を開業しています。
北一幸の登場回
相棒14「陣川という名の犬」
北一幸が初めて登場したのは「陣川回」です。
被疑者に恋をすることでおなじみの陣川公平ですが、今回は恋をした女性が無惨に殺害され、陣川が犯人に復讐しようとする切ない回となります。
相棒15「ギフト」
末期がんの治療のため病院で勾留中の北一幸が、見張りの警察官を殺害して逃亡。
北は「神が贈り物をくれた」と伊丹に電話をかけ、犯行の再開を匂わせます。逃亡には何者かが手助けしている状況もあり、杉下右京たちは北一幸の行方と、その共犯者を探します。
脚本家
脚本を担当されたのは、いずれの回も真野勝成さんです。

浦神鹿の回も担当する脚本家さんだね!
北一幸の人物像
若い女性の顔を傷つけるシリアルキラー
北一幸は、若い女性をターゲットとする連続殺人犯です。
自分好みの若い女の後をつけ、一人になったところで顔面を殴り、殺害後にその顔を刃物で切り刻みます。
4人目の犯行までは2010年~2011年にかけて行われましたが、そこから5年間、犯行が止まります。
その理由は、なんと病に冒され治療を受けていたからでした。
しかもその病は、一度は快方へ向かうも再発し、余命2か月を宣告されたといいます。

北一幸はやたら「運命」とか「神」みたいな言葉を使っているよね

病気になって天罰とか天命みたいなものを意識し始めたのかな?
闘病のため犯行を諦めていた北ですが、余命宣告を受けたことで「やらない後悔より、やってから後悔したほうがいい」と考え、2016年1月に犯行を再開しました。しかも今度は「本当に殺害したい女性」を狙ったといいます。
北一幸のターゲットの特徴
北一幸のターゲットは黒髪、ストレート、セミロングヘアの若い女性です。
病気になる前は「足がつきにくい」という理由から、売春婦のみを狙っていました。
しかし、北が本当に殺害したかった女性は、喫茶店や図書館で資格勉強に取り組んでいる間に見かけた女性たちです。
北は真面目な顔で勉強しながら、顔を切り刻みたい女性を見つけては素性を調べ上げ、「候補者」としてリストアップだけ行ってきました。
そして余命宣告を受けて犯行を再開した北は、かつて喫茶店で見かけた女性客2名と、その喫茶店で当時アルバイトをしていた矢島さゆみ(黒川智花)を狙います。

この後の「ギフト」でわかるんだけど、警察が押収した北のリストのうち、まだ被害に遭っていない女性は67名らしい

犯行を再開した後の被害者と合わせるとちょうど70人ってことか!
つまり北一幸は、司法書士の試験勉強をしながら70人の女性のストーカーをやり遂げたことになります。(試験にもちゃんと合格している)

しかも犯行を再開しなければ警察に捕まらなかった可能性があるからね

相棒の世界にたまに現れる謎の天才か…
殺害した人数は11名
北一幸は、初登場回で女性を6名、再登場回でさらに女性1名、男性4名の合計11名を殺害しています。

相棒屈指のシリアルキラーだ…
「陣川という名の犬」では、矢島さゆみの遺体を自身の犯行に見せかける目的で損壊しているため、1件の死体損壊と犯人隠避の罪が、「ギフト」では段原亮が助かっているため1件の殺人未遂罪があります。
なぜ殺人犯の身代わりに?
初登場回で北一幸は、矢島さゆみを含む女性たちの殺害をあっさりと認めます。
しかし、矢島さゆみを殺害した真犯人は北一幸ではなく、彼女を逆恨みした生木拓(なまきたく/草野イニ)でした。
ある晩、矢島さゆみを殺害するため、彼女が店長を務める珈琲店にやってきた北は、遺体となった矢島と、矢島を殺害して呆然としている生木を発見します。
生木を見た北一幸は、自分と同じ匂いを感じたといいます。
生きているだけで害虫のように嫌われる。
そんな共通点を生木と自分に見出し、シンパシーを感じて、彼の罪をかぶることにしたのです。
生木拓とは
北一幸の見立てどおり、生木拓は女性に好かれるタイプではありませんでした。
矢島さゆみからも、害虫駆除の仕事で自宅を訪問した際、足の匂いで会社に苦情を入れられています。
そのことを同僚にからかわれた生木は、もともとカッとなりやすい性格もあり、職場で暴力を振るってしまいます。社長に土下座までして得た仕事でしたが、この件で辞めざるを得なくなりました。

なんで土下座までしたの?

生木は指名手配犯だったから、普通の会社には入れなかったんだ
生木は、なんと殺人事件の指名手配犯でした。
かつて、弁当屋で働く女性にひと目ぼれし、彼女をストーカーしていた生木は、彼女が恋人から暴力を振るわれるところを見てしまい、その恋人を殴って死なせてしまいます。
このときの自分のことを生木は「女性にまともに相手にされたことがなく、たまたま優しく笑ってくれた弁当屋の女性に惚れて、指名手配犯になってしまった」と自嘲します。
その後、彼女を諦めきれない生木は、彼女が生活に困っていることを知り、害虫駆除業者で働きはじめ、給料の一部を彼女の家の郵便受けに黙って入れるようになりました。
女性は生木の金とは知りませんでしたが、生木はそれだけで前向きな気持ちになりかけていました。
矢島さゆみとのトラブルで無職となったのは、そんな時でした。
しかもコーヒー店で再会した矢島さゆみは生木の顔すら覚えておらず、そのことが殺害の動機となったのです。
「人助け」に喜びを覚える北一幸
北一幸と生木拓は初対面であるため、北は生木の過去を知りません。
しかし彼を見て、女性に好かれないタイプであることや、たまたま同じ女性を狙ったことにシンパシーを感じ、彼を逃すことにしたのです。
すべてが発覚した後、北一幸は、これまで自分の欲望のために犯行を重ねてきた自分でも、死ぬ前に人助けができるのではないかと思ったと伊丹に話し、「人のために女性の顔を傷つけたことは忘れがたい思い出になった」と満足そうに笑みを浮かべます。

この不穏な「喜び」が次のエピソードにつながっていくんだね
北一幸が初めて「男性」をターゲットに
2017年2月、裁判中の北一幸は、都内の病院で末期がん患者として治療を受けていました。
病室の前で北を見張っていたのは、所轄の巡査である潮崎良純(橋本淳)です。
ある晩、病院のシステムがダウンし、その間に北は逃亡します。現場には顔を切り刻まれた潮崎の遺体がありました。

ところが司法解剖の結果、潮崎の体内から毒物が検出されるんだ
このことから潮崎は自ら毒を飲んだ後、北の手にかかった可能性が浮上するよ
また、潮崎の腕にはリストカットの痕跡もあり、このことから特命係は潮崎の過去を調べます。
そこで判明したのは同級生からの心無いいじめでした。
潮崎に共感する北一幸
潮崎はトランスジェンダーであり、男子校の同級生である段原亮(宇賀神亮介)に恋をしていました。そんな潮崎の気持ちに同級生たちはうっすら気づいていたといいます。
ある時、段原は潮崎の想いに応えるふりをし、そのときの潮崎の反応を、別の学生にこっそり撮影させました。
そしてその映像を文化祭で流したのです。

悪魔の所業としか思えない…
さらに、段原たちは大人になってからも再び潮崎を騙し、同じ手口で動画を撮影しました。
そしてその映像を、なんと潮崎も参加している段原の結婚式の二次会で、余興として流したのです。

こいつらだけは、もう何をされても一ミリも同情できない…

傷ついた潮崎巡査は、入院中の北一幸に「このとき初めて人に殺意を覚えた」と打ち明けてしまうんだ
北一幸は潮崎を「こちら側」であると感じ、共感を覚えます。
そして潮崎に、彼を傷つけた4名の男たちを代わりに殺害することを約束しました。
そこから、潮崎はひそかに北一幸の逃亡準備を整え始めます。
しかし、やはり連続殺人犯に復讐を託すことへの罪悪感からなのか、北一幸の逃亡準備を終えると自ら毒を飲みます。
潮崎の願いを確かに受け止めた北は、毒が回り始めた潮崎の顔面を殴り、殺害後にその顔を切り刻みました。
それは、女性の心を持つ潮崎への、北からの最大限の敬意でした。

どうしよう
北一幸が全然わるいやつに見えない…
連城弁護士を通じて「妻」と知り合う
逃走準備を進める際、北一幸は弁護士の連城建彦(松尾諭)を通じて、北一幸を信奉する有村みなみ(片山萌美)にも協力を依頼します。
偶然にも彼女は北一幸が、かつて図書館で見かけてリストアップしていた女性でもありました。
北一幸は、復讐に手を貸してもらう代わりに、北と結婚したいという有村の願いを聞き入れます。
病院を脱走した北は、有村の助けを借りて復讐の準備を進めます。
しかし、有村みなみもまた、死を望んでいました。
そして復讐の準備が整ったところで、北は彼女と結婚し、その願いどおり彼女も殺害します。

有村はどうして…?

はっきりは説明されてないんだけど美人であることを目立たせないように生きていたと説明されているよ

そうなんだ、容姿で嫌な想いをしたことがあったってことかな…
潮崎の復讐を遂げる北一幸
潮崎の復讐相手の一人であるバーの店長を殺害した北一幸は、彼のスマホを奪い、残りのメンバーを一人ずつ店におびき寄せ、殺害します。
段原に対しては「可愛い客が来ている」として有村みなみの写真を添付したところ、かなり乗り気な返信がありました。

メールだけでクズであることが伝わってくる…

ここらへんはもう北一幸を応援してたよ
段原が来店した際、北一幸はバーの新しい店員になりすまし、上着を預かるふりをして段原の背後に回ってスタンガンで気絶させます。
そして段原の体を仰向けに拘束し、段原の意識が戻ったところで、彼の足をナイフで刺します。
このまま死ぬまで刺し続けようとする北一幸ですが、途中で特命係に発見されました。
「神にはユーモアがある」
北一幸はたびたび「神」に言及し、自分に似た人物や理解者が現れると「神にはユーモアがある」と感激しています。
余命宣告を受け、最後に悔いが残らないよう犯行を再開した北ですが、そこから自分と同じ匂いのする人物や自分を理解してくれる人物に出会い、その人たちの力になることに喜びを覚えていきます。
絶望しかない残り少ない人生の最後にこのような「贈り物」を用意してくれた、「神さまの粋な計らい」のようなものを感じたのでしょう。
杉下右京の最後の言葉
北一幸が潮崎の顔を切り刻んだ理由を言い当てた杉下右京。
自分を理解してくれる者が思わぬところから現れ、北一幸は喜びを抑えきれないといった様子です。
そんな北に杉下右京は冷たく「あなたの側には誰もいない」と言い、自分の妄想であると突きつけます。

どんなに優しい気持ちがあっても殺人でしか解決できないあなたは、ずっと孤独ですよってことかな
これを聞いた北の顔からはみるみる高揚感が消え、冷たい表情になります。
犯罪の天才
これまで北一幸は、女性に気づかれず家まで尾行したり、女性が声を上げる前に手拳による一撃で確実に気絶させたりと、まるでプロの殺し屋のようなことを普通にやっています。

どうやってこんな技術を身に着けたんだろう

そもそも4人殺害して5年も潜伏できるのがやばすぎる
再登場回も末期がん患者でありながら、不意打ちでスタンガンを使用したとはいえ、20代の男性4人を殺害(1人は未遂)しています。
しかし、どこか体が痛むのか、話が進むにつれて汗の量が増えていく細かい演出もみられます。

体はきついけど、気力で乗り越えているってことだよね

底が見えないよね…
そう考えると、やっぱり杉下右京の最後の言葉は必要だったのかなと思うよ

なんで?

考えを否定して興を醒ましておかないと、瀕死でも何するかわからないから

そっか…また誰かに共感して、残りの力を発揮しちゃうかもしれないもんね
