相棒に登場する日下部彌彦についてまとめます。
日下部彌彦とは
氏名
日下部彌彦(くさかべ・やひこ)/演 榎木孝明
登場期間
season14〜
役職
法務事務次官(法務省の事務次官)
主な登場回
日下部彌彦がストーリーに絡んでいる主な登場回です。
主な登場回 | 概要 |
---|---|
S14-1 フランケンシュタインの告白 | 西多摩刑務所内で、囚人が若い刑務官を殺害する事件が発生。犯人は「警察にしか話さない」とし、刑務官の取り調べに応じない。法務省の日下部彌彦は、警視庁に捜査協力を依頼。そして警視庁に出向中の部下・冠城亘に、その捜査に加わるよう命じる。 事件解決後、法務省に戻りたがらない冠城亘に「猶予」と称して、自由を与える。 |
S14-4 ファンタスマゴリ | 大物のフィクサー譜久村(織本順吉)を追い詰めるため、特命係の情報をもとに地検特捜部を動かし、脱税の疑いで譜久村の家宅捜索を決行する日下部。さらには杉下右京の申し出を受け、その場に警視庁の捜査員を立ち会わせるよう手配した。これにより、譜久村による殺人の動かぬ証拠の発見につながった。 |
S14-15 警察嫌い | 冠城亘と軽口を叩きながら、しゃぶしゃぶを食べている。 後に冠城亘が、暴力団組長・伊縫(上杉祥三)の娘が殺害された事件で警視庁の面々を振り回していることを聞きつけ、電話で注意している。 |
S14-16 右京の同級生 | 法務省の内部部局である入国管理局で、摘発の失敗が続いていた。情報漏えいを疑った日下部彌彦は、冠城亘に秘密裏に真相解明を指示する。 |
S14-18 神隠しの山 | 日下部彌彦は、冠城亘とともに山梨のゴルフコンペに参加するも悪天候で中止に。 冠城亘から、神隠しの山の話を聴く。 |
S14-20 ラストケース | S14-15で令状発行を阻止した冠城亘の行動が発覚し、杉下右京も自宅謹慎となる。警視庁から連絡を受けた日下部彌彦は呆れた様子で、冠城亘に左遷となることを告げる。 テロ事件の解決後、日下部彌彦は冠城亘に天下り先のリストを渡し希望を尋ねる。冠城亘は、リストの最下部に日下部彌彦によって付け足された「警視庁」を選択した。 |
S15-1 守護神 | 警視庁に入庁した冠城亘は、特命係ではなく警視庁の広報課で社美彌子(仲間由紀恵)の部下となっていた。日下部彌彦は久々に法務省に冠城亘を呼び出し、社美彌子の身辺を調べて報告するよう依頼する。 一方、日下部は、法務省の外局である公安調査庁の坊谷一樹(蔵原健)にも社美彌子を探らせていた。しかし、坊谷は何者かに殺害され山に埋められる。 |
S15-8 100%の女 | 「100%の女」と呼ばれる期待の若手検事・倉田映子(鶴田真由)は、ある事件で目撃者の証言を微妙に修正させてしまう。その事実と理由を杉下右京に突き止められたことで職を辞した。彼女に目を掛けていた日下部彌彦は、杉下右京に己の正義を問うも理解しあえず、杉下右京に怒りを向ける。また、それに加担した冠城亘にも、宣戦布告に近い警告を行う。 |
S15-18 悪魔の証明 | S15-1で、日下部彌彦が冠城亘に依頼した内容の詳細が、冠城の回想で明らかとなる。 日下部彌彦の狙いは、社美彌子が外国人スパイと通じて国を裏切っていた証拠を見つけることにあった。しかしこの疑惑は警視庁内で解決し、日下部彌彦が彼女を追い詰めることにはならなかった。 |
S16-1、2 検察捜査 | 特命係が妻殺害の被疑者・平井(中村俊介)に脅迫の罪で告訴される。青木年男(浅利陽介)の密告により、この事実を知る日下部彌彦。S15-8にて、些細な違反で部下の倉田を辞職に追いやった杉下右京への意趣返しのため、日下部は検事・田臥(田辺誠一)に命じ、特命係が捜査権もないのに捜査を行っている事実の立件を命じる。冠城亘については「特に恨みはないが」と言いつつも、杉下右京と共に立件して構わないとした。 |
S16-8 ドグマ | 特命係が捜査している殺人事件に関わる商社は、国策として武器売買を行っていた。日下部彌彦は上からの命令で、かつての部下・冠城亘を呼び出し、この件に手を出すなと命令するが、冠城亘はもう上司ではないと聞く耳をもたない。 また、これまで杉下右京の捜査に協力してきた検事・黒崎を左遷する。 |
S16-13 いわんや悪人をや | S15-1で殺害された坊谷一樹の白骨遺体が発見される。公安調査庁の職員であることや、生前に社美彌子を監視していた疑いがあることから、特命係は日下部彌彦のもとを尋ねる。日下部は、坊谷に社美彌子を監視させていたのは自分であると認めた。「その事情を警察に話していれば事態は違っていたのでは」と日下部を責める杉下右京。日下部もまた「これは捜査なのか」と尋ね、険悪な空気になる。 |
S17-7 うさぎとかめ | 2年前に失踪した国土交通省の官僚・鮫島(山中崇)が負傷した姿で発見される。次官候補と目される杉原(松田賢二)と谷川(関幸治)のどちらかが犯人であると目星を付けた冠城亘は、日下部彌彦の前に現れ、2人に関する情報を求める。冠城の話を聞く前に立ち去ろうとした日下部彌彦だったが、結局、冠城に情報を提供する。もっともこれは温情ではなく、鮫島は2年前に地検特捜部が動いていた談合疑惑のキーパーソンであったため、未解決事件のために協力したに過ぎない。冠城亘にはあくまで「貸しだ」と強調した。 |
S17-10 ディーバ | 敦盛代議士(西岡德馬)など政財界の大物が所属する「Gentleman Social Club」の一員として、日下部彌彦が登場する。事件解決後、敦盛のスキャンダラスな動画を観て、一同は彼を見限る。 |
S20-19、20 冠城亘最後の事件 | 8年前に鑓鞍兵衛(柄本明)を襲撃した京匡平(本宮泰風)が出所した。この情報を鑓鞍にいち早く伝える日下部彌彦。まだ内閣情報調査室にも入っていない、公安調査庁が刑務所を通じて独自に入手した情報だった。 事件解決後、日下部彌彦は、公安調査庁の必要性が問い直される時期とし「改革のためのインパクト」を求め、冠城亘をスカウトする。しかし身分は正式採用ではなく契約職員というもの。冠城亘はそれを受け入れる。 |
日下部彌彦の人物像
冠城亘の良き理解者
法務事務次官である日下部彌彦は、4代目・相棒の冠城亘の良き上司であった人物です。
冠城亘によると、日下部彌彦には「昔から可愛がってもらっていた」とのこと。
気になる事件を冠城亘に調べさせたり、一緒に食事をしたり、ゴルフコンペに参加したりと、公私ともに親しくしています。
冠城亘にフランクに接する日下部ですが、好奇心の強い冠城亘を心配する様子も見られます。
冠城亘と杉下右京が出会い、行動を共にしていると知った時は、甲斐峯秋を訪ねて、「冠城などと付き合っていたらロクなことがない」と、暗に杉下右京を冠城亘から遠ざけるよう依頼します。(S14-1)

このときの杉下右京は、無期限の停職処分中だからね。やばい人だって感じて調べたんだろうね

出世する人の嗅覚ってすごいんだなあ
一方で、特命係で活き活きと活躍し、法務省に戻りたがらない冠城亘に対しては「猶予」と称して自由な期間を与えてやる度量も持ち合わせています。(S14-1)
season14最終話では、冠城亘が同シーズンの第15話(青木年男の初登場回)で、警視庁の捜査妨害をしたことが表沙汰となります。警視庁から報告を受けた日下部彌彦は、冠城亘を左遷せざるを得ない状況となりました。日下部彌彦は冠城亘のために、水面下で甲斐峯秋に話をつけ、警視庁で特命係として働ける道を用意してやります。(S14-最終)

冠城亘に渡した左遷先のリストに、手書きで「警視庁」って付け足して書いてるのは、めちゃくちゃかっこよかった!
ところが、蓋を開けてみると、冠城亘は特命係ではなく、社美彌子が課長を務める広報課に配属されていました。「警視庁の嫌がらせ」であると杉下右京に話す甲斐峯秋ですが、このことは、警視庁に対する甲斐峯秋の力が弱まったことと、甲斐峯秋をライバル視する、警視庁の衣笠副総監の台頭を表しています。
日下部彌彦が法務事務次官になった理由
日下部彌彦は法務省のキャリア官僚であり、そのポストは「法務事務次官」です。
前任の法務事務次官が急逝したため、その「つなぎ」として、日下部彌彦が起用されました。
とはいえ、法務事務次官のポストは、本来は検事に与えられるものであり、検事にとっては、検察庁幹部への通過点となる重要なポストです。
言い換えると、そのような重要なポストへの就任が例外的に認められるほど、日下部彌彦が優秀で、組織から高い評価を得ている人物といえます。
冠城亘によれば、日下部彌彦は「検事ではない特殊な事務次官」「思ったとおりに行動できる」立場にある人物であり、日下部彌彦もまた「やりたいことをやる」と冠城亘に話しています。
日下部彌彦の「特殊な地位」とは
通常、各省の事務次官は、官僚のトップ(いわゆる事務方の長)のポストにあたります。
各省のポストは上から、大臣→副大臣→大臣政務官→事務次官の順となります。ただし上の3名は官僚(国家公務員)ではなく政治家(国会議員)であるため、官僚のトップは事務次官となります。
ところが、検察庁を管轄する法務省の事務次官(法務事務次官)の場合は、事務次官よりも、検察庁の幹部職のほうが実質的には高位とされています。
その理由は、法務事務次官のポストには通常、検察官の経歴のある者が就任し、その次は、検察庁幹部に進むことが慣例となっているからです。
ちなみに歴代の法務事務次官の後のポストを実際に調べてみると、ほとんど全員が「高等検察庁検事長」や「最高検察庁次長検事」といった幹部に就任しています。
わかりやすくいえば、法務事務次官は「検察官のためのポスト」であり、しかも「検察庁幹部への通過点」なので、法務事務次官と検察庁幹部の内部での力関係は、通常なら「法務事務次官<検察庁幹部」となります。
冠城亘が杉下右京に、日下部彌彦の立場について「思ったとおりに行動できる」と話したのは、日下部彌彦は検事ではないため、検察庁幹部になることがなく、慣習によって生じる力関係が、日下部彌彦には働かないことを説明したものとなります。
また、一般の国家公務員である日下部彌彦にとって、これ以上の地位も望めません。そのため、他からの圧力を感じることなく自分の信念でやりたいことをやれる、特殊な地位にある人物といえます。
日下部彌彦と特命係の関係
最初はとても良好な関係だった
当初、日下部彌彦と特命係の関係は良好でした。
日下部彌彦が冠城亘に調査を命じた刑務官殺害事件(S14-1「フランケンシュタインの告白」)や入国管理局の摘発情報の漏えい事件(S14-16「右京の同級生」)は、特命係により解決されています。
反対に、特命係の捜査にも日下部彌彦は協力しています。
杉下右京が20年前に取り逃した大物フィクサー・譜久村(織本順吉)の逮捕は、日下部彌彦が地検特捜部の黒崎健太(内田裕也)らを動かさなければ叶いませんでした。

譜久村の事件は本当にひどいので、こちらの記事でまとめています。
倉田映子の辞職で特命係と敵対関係に
season15第8話では、将来の検察庁幹部となることを期待された「(有罪率)100%の女」こと倉田映子(鶴田真由)が登場します。
倉田はある些細な不正を特命係に突き止められ、反省の意から辞職を選びます。
このことに日下部彌彦は怒り、特命係と対立してしまいます。
いったい何が、日下部彌彦を怒らせたのでしょうか。
倉田映子は、日下部彌彦が気に掛けていた若手職員の一人でした。
倉田映子が突然会いに来たときも、日下部は彼女の近況をきちんと把握しており、男性検事たちが出世頭である倉田に嫉妬して、失脚させるネタを探していることを話題にしています。
その倉田映子が、冠城亘が公判中の事件を嗅ぎ回っていることに苦言を呈すると、さっそく日下部彌彦は冠城亘を呼び出し、手を引くよう助言します。
ただし、このときの理由は、「場合によっては外交問題に発展する事件だから」というもの。
倉田映子が、自分の不正が暴かれるかもしれないことを日下部彌彦に伝えていないことがわかります。
この時の日下部彌彦は、まだ特命係を好ましく思っており、特命係の活躍を楽しみにしているとも話していました。
その後、倉田が些細な違反を理由に検事を辞職し、状況は一変します。
倉田の辞職の理由を知って、特命係を呼び出した日下部彌彦。
杉下右京に、一体どのような正義があって倉田の不正を探ったのか、納得のいく弁明を直接聞くためでした。
「これから彼女がやろうとしていた正義を失うことのほうが、大きな損失だと思わないか?」と杉下右京に言葉を求めますが、杉下右京は「法を破って正義を全うできるとは思えない」と返答します。
内容はもっともですが、日下部を納得させる回答ではありません。
「私は君を許さないよ」
日下部彌彦は杉下右京に静かにそう伝えました。
さらには、冠城亘にも「お前もせいぜい気をつけろ」と警告します。

うーん…たとえば、「倉田映子にこのまま無理をさせれば、いずれ取り返しのつかない隠蔽をしたかもしれない」とか、そういう釈明でもあれば、怒りも多少は収まったのかな?

少なくとも、何らかの弁明はあると思って呼んだわけだから、あの態度はないかも…
この回だけを見れば、日下部彌彦が自分の意に沿わなければ徹底的に叩こうとする尊大な人物に見えなくもないところです。
しかし、日下部彌彦はそれほど器の小さな男ではありません。
それでは、なぜ彼はここまで怒ったのでしょうか。
倉田映子のしでかしたことは、厳密には違反です。
しかしそれは、裁判での量刑に関わるようなものではなく、担当する事件の様相や結末に何ら影響しない些細なものでした。
もちろん、証拠の一部を歪める行為は、たとえ些細なことでもあってはならないことです。それは日下部彌彦も重々承知しているでしょう。
しかし、この段階であれば、日下部彌彦に相談して倉田映子の処分を委ねることはできました。
しかも日下部彌彦であれば、より多くの選択肢を彼女に与えられたはずです。
日下部彌彦にしてみれば、今回、特命係がやったことは、日下部たちが守り続けている土地を勝手に踏み荒らし、頼んでもいないのに粗探しをして、大切に育てた若い目を摘み取ったことで、正義をまっとうした気でいる…そんな風に見えているのでしょう。
特命係に最強の刺客を送る
season16第1話・2話では、日下部彌彦がついに動きます。
警視庁の青木年男(浅利陽介)からの情報で、妻を殺害した罪で逮捕されている大富豪・平井陽(中村俊介)が、特命係を脅迫で告訴しようとしていることを知った日下部彌彦。
警視庁が相手にしないであろうこの告訴を、日下部彌彦は検察庁に受理させ、これを皮切りに特命係を「捜査権がないにもかかわらず捜査を行った」という「違法捜査」で立件するよう田臥に指示します。

「法を破って正義を全うできるとは思えない」と言い放った杉下右京への意趣返しだね
しかし、結果は失敗に終わります。
理由は、甲斐峯秋の失脚を狙う衣笠副総監(大杉漣)の暗躍にありました。
衣笠にとって、特命係を検察庁に差し出すことは容易いことですが、「どうせやるなら、甲斐峯秋が特命係の組織図上の上司となった後にすれば、甲斐峯秋を特命係ごと消し去れる」と考えたのです。
今回の違法捜査の件は、甲斐峯秋がまだ特命係の上司となることを承諾していない時期の話。
そのため、今回は特命係に正式な捜査命令があったことにして、立件を見送らせたのです。
日下部彌彦がねらう社美彌子の秘密
なぜ日下部彌彦は社美彌子をねらうのか
日下部彌彦と特命係の因縁は、倉田映子の件に始まりますが、それとは別に、日下部彌彦は警察庁官僚の社美彌子(仲間由紀恵)に目をつけます。
理由は、社美彌子が外国人スパイのヤロポロクと親密な関係にあり、二人の間に娘がいるという情報が、日下部彌彦の耳に入ったためです。
しかも、社美彌子は「公安調査庁不要論者」の一人。
公安調査庁とは法務省の外局であり、情報調査を担当する部署となります。
日下部彌彦にとって、公安調査庁不要論者は「仇のようなもの」。
それであれば、手心を加える必要はありません。
冠城亘に密命を与える
season15第1話、冠城亘は警視庁に入庁したものの、まさかの広報課への配属となりました。
当時の広報課長は社美彌子。
二人は気が合い、仕事帰りに2人で食事をするほど打ち解けていました。
そこで日下部は冠城亘を呼び出し、社美彌子の身辺を探るよう依頼します。
警察と連携して調べてはどうかと提案する冠城ですが、「警察のような巨大な権力を持つ組織は隠蔽するため、信頼できない」と返します。まずは独自に証拠を固めてから動き出すつもりのようです。
ところが、冠城亘は社美彌子を心情的に裏切ることができません。
かといって、日下部彌彦に歯向かうこともできないため、冠城は社美彌子にこのことを明かし、自身を特命係に異動させるよう願い出ます。
冠城はもともと特命係を希望して警視庁に転職したため、「特命係に配属されたことで、社美彌子を調べられなくなった」のなら、日下部彌彦にも不自然に思われないと考えたのでしょう。
しかし、日下部彌彦は、後に「社美彌子側に付いた」「面従腹背(めんじゅうふくはい)」の男だと、冠城亘のことを評しており、冠城が命令に意図的に背いたことを理解していました。(S16-13)
坊谷一樹が殺害される
冠城亘に密命を下す前、すでに日下部彌彦の下で、公安調査庁の坊谷一樹(蔵原健)が社美彌子の身辺調査に動き出していました。
ところが、この坊谷一樹は、season15第1話で何者かに殺害されます。
遺体が発見されたのはseason16第13話でした。
杉下右京は冠城亘とともに日下部彌彦を尋ね、坊谷一樹の行方不明届を警察に提出する際、社美彌子の監視命令を与えていたことを伝えておくべきだったと、日下部彌彦をやんわりと非難します。
もしそれで坊谷が「特異行方不明者」として捜索されていれば、結果は違っていたかもしれないというのが、杉下右京の言い分でした。
ちなみにその後、犯人の話を聞くと、坊谷一樹は自宅に侵入した犯人に殺害され、自宅から運び出されて山中に埋められました。つまり、行方不明届を提出するとき、坊谷は既に亡くなっています。このことから、社美彌子の監視命令の存在を明らかにしていようがいまいが、坊谷は救えなかったことになります。
社美彌子への追及が止まる
Season15最終話で、社美彌子がシングルマザーであることが週刊誌に報じられ、それを機に、娘の父親がヤロポロクであることが警視庁上層部の知るところとなります。
この件は、社美彌子のある秘策により、警察は社美彌子が外国人スパイとの間に子を儲けていることで彼女を追及することはしませんでした。
秘策については、こちらの記事で解説しています。
日下部彌彦は、社美彌子が失脚を免れた理由までは知らないため、このことを不思議がっています。(S16-13)
冠城亘を公安調査庁にスカウトした理由
Season20最終話「冠城亘、最後の事件」では、冠城亘が警視庁を退職し、公安調査庁に入ります。
公安調査庁にスカウトしたのは、他でもない日下部彌彦でした。
冠城亘とは、険悪な仲であるはずなのに、一体何があったのでしょうか。
異例の出世を果たした社美彌子
season20第3話で、社美彌子が内閣情報調査室のトップ・内閣情報官に異例の出世を果たします。
その出世を後押ししたのは、国家公安委員長であり、現職の衆議院議員でもある鑓鞍兵衛(やりくら・ひょうえ/柄本明)でした。
社美彌子と鑓鞍兵衛は、どちらも日下部彌彦とは因縁のある人物です。
社美彌子は、公安調査庁「不要論者」の一人。さらには日下部彌彦が身辺を探っていたことも(冠城亘によって)知られています。したがって、日下部彌彦と決して良い関係ではありません。
鑓鞍兵衛は、かつて公安調査庁の「局」への格下げ案を議会に提出したことがある人物。社美彌子のような個人的な因縁があるわけではありませんが、法務省・公安調査庁にとっては要注意人物でした。
日下部彌彦にとって好ましくない2人が、内閣直属の情報機関で力を持つことに懸念があったと考えられます。
公安調査庁の存在価値を上げたい日下部
かつて鑓鞍兵衛を襲撃した男・京匡平(本宮泰風)が、出所後に再び鑓鞍兵衛を襲撃すると刑務所内で話していたことが、公安調査庁の独自の情報網で日下部彌彦の耳に入ります。(S20-19)
内閣情報調査室を出し抜くことで、鑓鞍兵衛の公安調査庁に対する評価を上げるチャンスを掴んだ日下部彌彦は、さっそく鑓鞍兵衛に接触し、この情報を提供します。
その一方で、日下部彌彦は冠城亘を久々に呼び出し、社美彌子との最近の関係を尋ねます。
冠城亘は、警視庁を去ってからは社美彌子とは没交渉であるといいますが、日下部彌彦は「プライベートでも親しくしていそうだが」と、何やら知っている様子です。
実は冠城亘は、社美彌子が警視庁を去った後も、社美彌子・社マリア親子を見守り続けており、最近は多忙な社美彌子に代わり(勝手に)社マリアの遊び相手をしているのでした。
事件解決後、日下部彌彦は再び冠城亘を呼び出し、公安調査庁の改革のためにインパクトが欲しいとし、冠城亘を公安調査庁にスカウトします。(S20-20)
これ以外の理由は語られていませんが、冠城亘を自分の手元に置くことで、社美彌子の動きを把握することが狙いではないかと考えられます。
ただし、このスカウトを受けても冠城亘の身分は、正式採用でなく契約職員であるといいます。
これは日下部彌彦が、冠城亘をまだ許していないことの証といえるでしょう。
そして、ここまで冷遇しても、冠城亘が(社親子のために)公安調査庁にやってくることを、日下部彌彦は読んでいたことになります。
この直前、社美彌子は娘のために権力を悪い方向に使おうとし、それを冠城亘がギリギリのところで止めたばかりでした。社美彌子の動きを把握したいのは、冠城亘も同じなのです。
実際、冠城亘は公安調査庁で社美彌子の行動の把握に努めているようです。その内容の一部を、杉下右京にこっそり報告したと見られる回もあります。(S23-最終)
かつて、冠城亘と上下関係が良好だったころ、二人でしゃぶしゃぶを食べながら、日下部彌彦が「お前は女の趣味が悪い」と軽口を叩いていたことがありました。
長い間、冠城亘を見てきたからこそ、いろいろわかることがあるのでしょう。