今回は、相棒season11第2話「オークション」において、カイト君が知らなかった、落とし物は24時間以内に提出しないと権利がなくなる話について解説します。
読めばきっと、右京さんとカイト君のやり取りをもっと楽しく観ることができます!
相棒season11第2話「オークション」ってどんな話?
オークションのあらすじは、以下のとおりです。
30歳の若さでこの世を去ったアメリカの天才ジャズピアニスト、エド・クレメンス。
その指先や腕をかたどった、石こう製のオブジェである「エド・クレメンスの腕」が、都内のオークションハウスにおいて出品されることになります。
オークションまで、あと5日。
ところがこのタイミングで、オークションハウスの経営者・坂巻(岡まゆみ)が警察署に「腕の入ったケースをタクシーに置き忘れてしまい、どのタクシー会社だったのか思い出せない」と相談にやってきます。
カイト君の提案もあって、坂巻はこの事実をマスコミに公表。すると、落札予想額が1,000万円から3,000万円に急騰します。
もともと価値のあったものが、世間の注目を集めたことによって、その価値をさらに高めたというわけです。
そして、カイト君の予想どおり、腕の入ったケースをタクシーで拾ったという男性・相沢(山本まなぶ)が警察署にやってきます。
腕はその場で本物であることが確認され、坂巻は大喜び。
ひと安心するカイト君ですが、その翌日、相沢が遺体で発見されてしまいます。
エド・クレメンスは架空の人物です
カイト君、警察学校で習ったはずのことが思い出せない!
今回、カイト君は、特命係に配属される前に所属していた中根警察署の頼みにより、右京さんなしでエド・クレメンスの腕を紛失したオークションハウスの経営者・坂巻の相談に対応します。
エド・クレメンスの腕は、ケースに入れた状態で個人タクシーに置き忘れたことまでは判明していたため、カイト君は「マスコミに公表すれば、貴重な物だと気づいて早く届けてくれるのではないか」と考えます。
するとカイト君の見立てどおり、マスコミが報じた直後に、腕の入ったケースを拾ったという男性が中根警察署に現れます。
しかし、ケースを届けに来たのは、タクシー運転手ではなく乗客の相沢という男性。
相沢は「3日前に乗ったタクシーで拾った」と話し、仕事の都合により警察署に届け出るのが遅れたことを説明します。
相沢が届け出たエド・クレメンスの腕はその場で本物であることが確認され、坂巻は大喜びで、「正式なお礼は後日改めて」と言いながら、カイト君の目の前で茶封筒に入った数十万円の現金を相沢に手渡しします。
その後、カイト君は特命係に戻り、この話を右京さんに報告しました。
右京さんの第一声は「それで君は、のこのこ帰って来たわけですか?」とバッサリ。
施設内の落とし物に適用される「24時間ルール」を、カイト君が知らなかったことが発覚するのです。
ちなみに右京さんによれば、この知識は「警察学校で習ったはず」とのことでした。
カイト君は警察学校を卒業してから、中根警察署の地域課に7年勤務しています。交番時代には、落とし物を拾った人から届け出を受ける機会などもあったのではないかと思うのですが、きっと刑事のお仕事以外に関心がなかったのでしょうね。
「落とし物は24時間以内に提出しないと権利がなくなる」は本当なのか
それでは、カイト君の何が悪かったのかを解説します。
落とし物を届けた人にはお礼をもらう権利がある
落とし物が持ち主に返還された場合、その落とし物を拾って警察に届け出た人には、持ち主からお礼をもらう権利があります。
この「お礼」は「報労金」(ほうろうきん)といって、持ち主は拾ってくれた人に、その拾得物の5%~20%の価値に相当する報労金を支払うことが義務づけられています。(遺失物法第28条第1項)
ただし、報労金は必ずもらえるわけではありません。
遺失物法には、落とし物を拾った日から一定の期限内に届け出をしなかった場合、報労金をもらう権利がなくなることが定められています。
それでは、報労金をもらうためには、いつまでに届け出をしなければならないのか。ここが今回のポイントになります。
原則は一週間以内だが…
原則的には、落とし物を拾得した日から一週間以内です。
しかしこれは、道端や公園などその場に管理者のいない場所で落とし物を拾った場合の話になります。
拾った場所が、お店や駅構内の施設内や、飛行機やバス、タクシーなどの乗り物内といった、常に管理する人がいる場所の場合は、一週間ではなく24時間以内に、基本的にはその場所を管理をしている人に届け出ることが決められています。
相棒では、カイト君がこの24時間の特例を知らず、その教示を関係者にしなかったため、右京さんに「のこのこ帰って来たわけですか?」と注意されているのです。
右京さんの説明を聞いているカイト君の、神妙な感じで絶対にわかってない人の顔がとてもリアルです
自分で警察に届けても「24時間以内」
今回、タクシーでケースを拾った相沢さんのように、タクシーの運転手などに提出せず、自分で最寄りの警察署や交番に届け出る行為については特にとがめられることはないようです。
警視庁の「落とし物について」のページにも、「やむを得ず、施設占有者に届け出できなかった場合は、警察署、交番等に届け出てください。」と示されています。
しかし、たとえ警察に持参しようとも「拾った場所」によって24時間以内のルールが適用される点には注意しなければなりません。
ちなみに、相沢さんがタクシーの運転手に引き渡しており、タクシーの運転手から警察に届け出た場合の報労金の権利は、相沢さんとタクシーで2分の1ずつになります。(遺失物法第28条第2項)
報労金を支払わなくても罰則はない
報労金を支払わないことについて、刑事罰はありません。
そのため、実際に支払うかどうか、支払うとすればいくらにするのかは、通常は当事者同士で決めることになります。
報労金で揉めれば裁判に発展することもあります。過去には、報労金の支払いを命じた判決もあるようです。
もちろん、権利の有無にかかわらず感謝の気持ちでお礼をすることは自由です。
警察は、報労金について一般的な説明はするものの基本的に民事(個人同士の権利と義務の調整)には関与しません。したがって、報労金の支払いを強制したり、交渉を支援したりするようなことはありません。
第2話「オークション」は他にも見どころいっぱい!
season11はカイトくんのファーストシーズンであり、見どころがたくさんあります。
第1話は右京さんとの出合いがメインでしたが、その分、第2話は相棒レギュラーとカイトくんの交流が多めに描かれています。
第2話の見どころは、こちらの記事で解説しています。