テレビドラマ「相棒season17」の第6話を解説します。
第6話「ブラックパールの女」の概要
放送日
2018年11月21日
主な出演者
西田尚美・松尾諭・宮田早苗・野中隆光・上野なつひ
相棒レギュラー・準レギュラー
角田課長・青木・伊丹・芹沢
脚本
山本むつみ
監督
権野 元
第6話「ブラックパールの女」のあらすじ
連城弁護士(松尾諭)からの依頼を受け、右京さんと冠城君は「平成の毒婦」こと遠峰小夜子(西田尚美)と面会することに。
遠峰小夜子とは、中高年の独身男性に対して真珠養殖事業への投資詐欺を働き、そのうち3名に対する連続殺人の罪で死刑判決を受けた、通称「平成の毒婦」。
彼女は投資詐欺は全面的に認めているものの、殺人は否認しており、現在は控訴の準備を進めています。
さらに彼女は、別件で民事訴訟を起こします。相手は出版社です。同社の週刊誌が彼女を殺人犯と断定するような記事を掲載したため、名誉棄損にあたると主張しています。そして出版社の顧問弁護士である連城には和解の条件として、彼女の事件捜査に関わっておらず、かつ、有能で実績のある刑事との面会を要求します。
このことから連城が右京さんを頼り、2人は遠峰小夜子の面会に訪れることになったのでした。
2人に対し、遠峰小夜子は週刊誌の誤りを指摘し始めます。
例えば、去年の11月にマレーシアで高級ブランドを爆買いしたとする記事は、本当は、シンガポールでの真珠販売店のリサーチを兼ねた旅行の間違いであると説明します。
旅行の同行者に証明してもらうことを提案する右京さん。しかし、残念ながら一人旅だったようです。
「でも…」と、切り出す遠峰小夜子。
シンガポール行きの飛行機内で、東都バイオラボの谷岡邦夫(谷藤太)と知り合いになったといいます。
谷岡邦夫といえば、世界のバイオテクノロジーを牽引する研究者ですが、自宅の風呂場で溺死したことが週刊誌で報じられたばかりでした。連城弁護士から連絡を受ける前に、特命係でも話題になっていた男性です。
谷岡邦夫の死をを知ると、彼女は「お気の毒に、若い奥様を残して…」と言います。
しかし、週刊誌に掲載されていた谷岡の妻の姿は、谷岡邦夫と同年代風でした。それを聞いた彼女は驚いた顔をし、「だったら、誰のためのブラックパールだったんだろう…」とつぶやきます。
彼女は飛行機の席で谷岡から女性へのプレゼントの相談を受けており、その際、シンガポールの真珠専門店の「ブラックパールのネックレス」を勧めていました。てっきり谷岡に若い妻がおり、妻への土産だと思っていたのです。
ブラックパールのネックレスの話が気になった右京さんは、谷岡邦夫の死の真相を調べ始めます。
第6話「ブラックパールの女」の見どころ
平成の毒婦こと遠峰小夜子が初登場
遠峰小夜子の初登場回です。
中高年男性の自宅を訪問し、真珠(ブラックパール)の養殖事業への投資を勧誘して資金を集めた上に、そのうちの3人を殺害した罪で死刑判決を受けています。
しかし彼女は、投資詐欺については認めるも殺人罪については否認しています。
遠峰小夜子が男性宅で真珠の養殖の魅力を説明する回想シーンがあります。
艶めかしさを感じさせる独特な説明の仕草を見ると、騙されることにも納得がいきます。
人の心をつかむ天才なのか?
しかし、色仕掛けで騙すなんて被害者はお怒りだろう…と思いきや、遠峰小夜子が逮捕された後も、被害者の中には彼女を擁護する男性が少なからずいたといいます。
多くの男性に取り入って金を奪った事実が明るみに出ているにもかかわらず、遠峰小夜子をそれほど悪く言わないそうなのです。
一体どのようにして、彼女は男性からここまでの信頼を得ることができたのでしょうか。
目的はラストで明らかに
今回のストーリーの最大の謎は、なぜ遠峰小夜子は有能で実績のある刑事との面会を希望したのか。
この謎は、ラストで明らかになります。
連城弁護士が再登場
season15第16話「ギフト」、season16第6話「ジョーカー」に登場した連城建彦弁護士の再登場回です。
右京さんの能力を高く評価しています。
今回、遠峰小夜子の要求を右京さんに告げ、「私の知る限り、その条件に適い、こんな酔狂なことに付き合ってくれる警察官は、杉下さんの他にはいません」と言い、遠峰小夜子に面会するよう頼みます。
こんな頼み方をしても右京さんなら面会に行くだろうと確信があるようです。
事件解決後、連城弁護士は右京さんからの遠峰小夜子に関する質問をはぐらかして、「まあ…モンスターにはモンスターを、と考えましたがね…」と再び失礼な物言いをします。
連城弁護士と遠峰小夜子の謎
遠峰小夜子の行動については、最後まで視聴すれば彼女の真のねらいがわかるため、「そういうことだったのか」と納得できます。
しかし、最後までわからないこともあります。
遠峰小夜子と連城弁護士です。
普通の弁護士に特命係のような知り合いはいない
今回、遠峰小夜子が週刊誌を訴えたのは、弁護士に会うことが目的だったはずです。
しかし、偶然やってきた弁護士にあのような和解の要件を突き付けても、普通は応じられません。
連城弁護士の言うとおり、あんな酔狂なことに付き合ってくれる刑事を知っている弁護士が、一体世の中にどれくらいいるでしょうか。
そう都合よく現れるはずがありません。
しかし、遠峰小夜子のもとにやって来たのは、そんな刑事を偶然にも知っている連城弁護士でした。この謎は明らかにされていません。
これは偶然だったのでしょうか。
それとも、過去には犯罪者に協力的だったこともある連城弁護士の噂を聞き、自分にも力を貸してくれるかも知れないと考えて、あらかじめ調べておいたのでしょうか。
連城弁護士と遠峰小夜子の会話シーンがない
遠峰小夜子は、話に嘘を織り交ぜて、右京さんの興味をうまく引いています。
また、事件解決後の遠峰小夜子と連城弁護士の面会シーンは2人が対面したところで終わっており、会話の内容はありません。
推測ですが、連城弁護士は最初から遠峰小夜子の計画をすべて聞いた上で協力しており、特命係の興味を引くための「アドバイス」をしていたのではないでしょうか。
そもそも連城弁護士が、本当に遠峰小夜子からあのような要求を受けたとして、「う~ん、よくわからんけど杉下さん当てとこか…」とはならないでしょう。
和解できなければ出版社側が負ける可能性がありますから、遠峰小夜子には確実に和解に応じてもらいたいと考えていたはずです。
そうすると、一体何をすれば満足して訴えを取り下げてくれるのか、遠峯小夜子に対して連城弁護士がその目的を確認しないはずがありません。
それを知ったからこそ「これは、杉下さん案件だな」と判断し、右京さんに連絡を取ったという流れでしょう。
それでは、遠峰小夜子は、本当に最初から刑事を当てにしていたのでしょうか。
おそらく拘置所で遠峰小夜子の真意を聞いた連城弁護士が、右京さんを巻き込むストーリーを描き、遠峰小夜子に提案したのではないでしょうか。
この仮説のもと最初の特命係と遠峰小夜子の対話シーンを見返すと、右京さんがブラックパールの話に食いついた瞬間の遠峰小夜子の顔が「…!!(…ほんとに食いついた!)」に見えてきます。
しかし、ラストでは右京さんが余計なことまで調べ上げてきたことに、遠峰小夜子は少し怒った様子でした。図星かな?
ポストドクターの抱える問題点にも言及
今回の相棒では、バイオ工学の研究職にもスポットがあてられています。
作中では主に、バイオ工学の分野は人材が余っていることや、博士課程を修了したポストドクターは大学でも助教や講師にはなれず、企業への就職も難しいことなどが語られています。
どうやらこれは、バイオ工学部門に限った話ではないようです。
文部科学省の審議会である「科学技術・学術審議会」に設置された人材委員会の、平成17年の資料「Webサイトの、「ポストドクター等若手研究者の現状と課題」によると、ポストドクター(ポスドク)のキャリアパスが不透明であることの問題点が取り上げられています。
優秀な人材がポスドクを経て研究者を目指す道を敬遠したり、博士課程への進学を若手が避けたりすることに繋がれば、日本の科学技術関係人材の質と量の確保に関し、深刻な事態となりえるそうです。
おや、冠城君の様子が…?
冠城君は、最初の面会前に「毒婦ってこういうイメージじゃないんだけどな…」とつぶやいたり、面会終了時にはその場に立ちつくすなど、明らかに遠峰小夜子に何かを感じた様子です。
右京さんも冠城君の異変を察して「気をつけたほうがいい」と忠告をします。
遠峰小夜子の次の登場回は、season18第17話「いびつな真珠の女」になります。