Tverは民間放送が無料で視聴できる公式テレビ配信サービスです。
普段は有料サブスクでしか観れない過去の人気ドラマでも期間限定で配信している場合があります。
うまく使い倒して、お気に入りの一作を見つけましょう!
今月のおすすめは以下のとおりです。
TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部
東映制作のテレビ朝日21時水曜枠といえば、「相棒」を始めとする人気刑事ドラマシリーズの黄金枠です。
この枠で放送された、シリーズ物ではない最後の連続ドラマが「TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部」となります。放送時期は2014年の春です。
「シリーズ物とならなかった」と聞くと面白くない作品だったのかと誤解されそうですが、実際はその反対です。他にない尖った魅力たっぷりのドラマとなっています。
配信スケジュール
・第1~3話:10/21(火)~
・第4~6話:11/11(火)~
・第7~9話:12/10(水)~
本作の尖りまくった魅力を3点に分けて紹介します。
魅力その①:途中で印象を変えてくる主人公
本作の魅力は、主人公の佐久晋吾(さくしんご/小澤征悦)。
ノンキャリアで史上最年少の警視庁刑事部捜査一課の管理官となった、叩き上げの刑事です。
谷中刑事部長(西田敏行)や部下にあたる13係の一部のメンバーからは、裏で「さくしん」と呼ばれて親しまれています。
もし第1話のみ視聴してドロップアウトされた方がいれば、「ん??主人公ってそんな親しまれるようなキャラだったかな?」と戸惑われるかもしれません。
初回の佐久晋吾は笑顔を見せることなく所轄の捜査員に「あなたたちは駒です」と言い放つなど冷徹で、まったく共感できないキャラクターとして描かれています。
ところが本当の佐久晋吾は、その言動からイメージされる人物像とはまったく違います。
それがわかるのが第一話の終盤から第二話であり、ちょっとスロースタートなのです。
本当の佐久晋吾は、被害者や現場の捜査員の心意気に寄り添える心優しい人物で、利権に縛られず組織の不正を次々と暴いていく痛快なキャラクターです。初登場時の印象を途中でがらりと変えてくるのが、本作の最大の特徴だと思います。
とはいえ味方を欺いて内部の裏切り者をあぶり出すなど「策士」な面もあるため、何か策があって言っているのか、素で不器用なのか、毎回様子を見なければわからないのがお約束となります。これがストーリー展開を容易に想像させない仕掛けにもなっています。
佐久晋吾を理解したうえでドラマの仕掛けを楽しめるようになれば、そこからはもう止まりません。
「♪サッサッサッ…」というコーラス入りのさくしんのテーマソングが流れるだけで、ちょっと笑えてきます。
本作はこのテーマソング以外のBGMも素晴らしく、シリアスな本作との調和度がかなり高いと思います。作曲家は「臨場」などを手掛けられた吉川清之さんです。
魅力その②:警察の不祥事を暴いていくストーリー
各ストーリーもかなり尖っています。
本作は人気刑事ドラマによくある「1話完結型」ですが、そのほとんどに所轄刑事の不祥事が絡んでいます。現実ならニュースで叩かれまくるであろう勢いで、警視庁の警察署幹部が佐久晋吾と13係によって沈められていくのです。
佐久晋吾が毎度のように警察不祥事に遭遇するのは偶然ではなく、警視総監の座を狙う谷中刑事部長(西田敏行)の差し金となっています。谷中は出世の邪魔になりそうな所轄署長らの不祥事を嗅ぎつけ、そこにさくしんを投入し、事件解決のついでに彼らを排除しているのです。
魅力その③:男だらけのガチドラマ
さらにもう一点、尖っているのは、登場人物が男だらけという点です。
主人公も、その上司も、一緒に事件を解決する13係のメンバーも全員男性です。何なら毎回変わる所轄の刑事たちもほぼ男性です。
「何だ、女性人気狙いかよ…」とがっかりしてはいけません。キャストを見る限り(失礼にあたったら大変申し訳ないのですが)たぶんそういうことではありません。
登場人物は、主人公や警視庁刑事部の幹部たち(小澤征悦、西田敏行、佐藤浩市)、捜査一課の特捜班のメンバーたち(田辺誠一、渡辺いっけい、神尾佑、田中隆三、猪野学、篠田光亮)、そして佐久晋吾の運転手であり刑事部長の内通者である屋敷(塚本高史)など実力派俳優ばかりです。不自然なアイドルのねじ込みはなく、世界観を崩す穴はどこにもありません。
特に西田敏行さんが演じる谷中刑事部長は、野心の塊でありながら表面上は柔和な「たぬき」タイプ。一方で、武田信玄について熱く語ったり、あの美声で歌ったり、部下からの塩対応に戸惑ったりと、お茶目で憎めない魅力的なキャラクターとなっています。
西田敏行さんが亡くなられたこともありますが、それ以外のキャストについても、いま同じような配役でドラマを作ることは難しいかもしれません。その意味でも貴重なドラマといえます。
未回収となった構想の痕跡も…
このドラマで残念なのは、後半に明らかに尺の足りていないエピソードがあることです。特に第7話はそれが顕著でした。
また、第5話で登場した捜査一課長の八神(佐藤浩市)がそれきり登場していないことや、谷中刑事部長(西田敏行)のその後、警視総監の甥という島野係長(田辺誠一)の設定など、まだまだ面白い構想があったはずなので非常に残念です。
ただ、それらを差し引いても十分面白い作品だと思います。

こういう刑事ドラマがまた観たいです
