【相棒】角田課長の役職の変化でみる「組対(ソタイ)」の歴史

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『相棒』の「暇か?」でおなじみの、組対(ソタイ)の角田課長。フルネームは「角田六郎」です。

現在の肩書きは、警視庁刑事部薬物銃器対策課長ですが、長年にわたり多くのファンを獲得してきた『相棒』だけに、

あれ?“組対五課”だった時期があったよね?

そもそも、昔は生活安全部じゃなかった?

と疑問に思った古参ファンの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、角田課長が所属する部署の変遷を解説します。

角田課長の役職が変わっている?

『相棒』は、2000年に放送された単発のスペシャルドラマ(いわゆるプレシーズン)からスタートしました。

角田課長は、そのスペシャルドラマ第2作目から登場し、連続ドラマ化されたseason1以降も継続して出演しています。
作中の立場は一貫して、特命係の手前のフロアで組員のような風貌の部下たちとともに暴力団に立ち向かう課長です。

階級も当初からずっと「警視」のままであり、キャリアである杉下右京の「警部」からみると一つ上になります。

元警察官
元警察官

ピラミッド型構造の警察組織では、巡査部長や警部補で警察人生を終える人も少なくありません

ノンキャリアのなかで「警視」は上澄み中の上澄みといえます


相棒の世界において、昇進もなく部署もずっと変わらない角田課長なのですが、一方で、角田課長の役職(肩書き)については、現実の警視庁における組織変更に合わせ、時代とともに変化しています。

ソタイの変遷といえば、よく刑事部の「捜査四課」の変遷にスポットがあてられがちなんだ

でも、角田課長の「薬物銃器対策」からの変遷にスポットをあてると、また違ったソタイの歴史が見えて面白いよ!

角田課長の役職の変化と警視庁の「組対(ソタイ)」の歴史

角田課長の役職は、四半世紀を迎える相棒の世界のなかで、下記のように変化しています。

【角田課長の役職の変遷】

生活安全部薬物対策課長

組織犯罪対策部組織犯罪対策第五課長

組織犯罪対策部薬物銃器対策課長

刑事部薬物銃器対策課長(現在:2025年10

組対(ソタイ)の角田課長」という呼び方が定着しているけれど、組織犯罪対策のなかでも角田課長は薬物銃器取り締まるプロなんだ

それではこの役職の変化をもとに、現実の警視庁における組織犯罪対策(通称「ソタイ」)の歴史を一緒に見ていきましょう。

参考にした資料

東京都総務局|「警視庁の変遷」など

角田課長の最初の役職は「生活安全部薬物対策課長」

角田課長の最初の役職は「生活安全部薬物対策課長」です。

相棒のプレシーズン(2000年)では、特命係の部屋へ向かう途中のフロアに薬物対策課や保安課といった“シマ”が横並びで配置されています。

今と違って「薬物対策」が生活安全の部門であり、「銃器対策」とは別個であった、当時の組織構造を反映していることがうかがえます。

なお、同じ平成14年(2002年)には「銃器対策課」と「薬物対策課」が統合され、実は「銃器薬物対策課」が発足していますが、この動きは翌年の大改革を前にした一時的なものであったと考えられ、相棒ではわざわざ反映しなかったのだと思います。

薬物銃器対策はもとは「生活安全部」の仕事だった

暴力団の資金源が多様化するにつれ、暴力団対策には、薬物・銃器・風俗・賭博・国際犯罪捜査といった分野まで含めた、多角的な情報収集と捜査が求められるようになりました。
これによりかつては刑事部の「捜査第四課」と呼ばれる部署などが暴力団の摘発を担い、一方で、生活安全部(当時「防犯部」)の「保安課」と呼ばれる部署が「保安一課」と「保安二課」の二つに分かれ、銃刀法や風営法などの許認可等の行政手続とそれに伴う違法行為の摘発を行いながら、薬物対策や銃器対策も担っていました

薬物銃器対策は、もともとは生活安全部保安課の仕事だったんだね

season17第4話「バクハン」では、組織犯罪対策部の角田と源馬が協力して暴力団に立ち向かうなか、保安課の百田が源馬の不正を暴こうとするストーリーが展開されました。

ここでは「角田と源馬が仲間で、百田は敵」という構図ですが、その源流をたどれば、角田と百田は同じ生活安全部なのです。

薬物銃器対策が保安課から独立→このタイミングで相棒スタート

薬物銃器対策における組織変更は、まずは保安課からこれらの業務を切り出す方向性ですすめられます。

平成5年(1993年)に保安第二課が「薬物対策課」へと改称(「保安一課」は「保安課」へ)。

さらに平成8年(1996年)に保安課と薬物対策課の間に新たに「銃器対策課」が設置されました。

これにより生活安全部の内部にて「薬物対策」と「銃器対策」の課がそれぞれ「保安」から独立した形でいったん存在することになります。

なお、防犯部は平成7年(1995年)に生活安全部へと改称されています。

相棒のプレシーズン(2000年~)がはじまったのは、このタイミングだったから、角田課長の最初の役職は「生活安全部薬物対策課長」なんだね

ところで「課」として独立するっていうのは、どういう変化だと捉えたらいいの?

組織上の「格上げ」といえるよ!

所轄とちがって警察本部(警視庁本部など)の「課」のトップ(課長)は警視や警視正になるんだ

捜査部門の場合、その下に「班」や「係」をおいて、そのトップ(班長や係長)に警視や警部を置くことで、専門性の高いチームを機動的に運用できるようになるよ

つまり、その分野での組織力がめちゃくちゃアップするんだ

一般企業でも行われる、事業分離のための会社分割や社内ベンチャーとかに近いイメージかな?

業務を切り出すという部分でいえば似ているかもしれないね

とはいえ、課に格上げされてもその上の部長(警視長)や警察庁の方針が絶対だから、自由度のイメージは民間企業とは全然違うかも…

いずれにせよ、警視庁が薬物銃器対策に組織的に力を入れてきた歴史なんだね

平成15年(2003年)4月~ 「組織犯罪対策部組織犯罪対策第五課長」

平成15年(2003年)4月、刑事部の「捜査第四課」「暴力団対策課」「国際捜査課」と、生活安全部の「銃器薬物対策課」を統合する形で、「組織犯罪対策部」が新たに設置されました。

相棒の警視庁の角田課長も、いつの間にか「組対(ソタイ)の角田課長」って呼ばれるようになったね

現実の組織犯罪対策部は、当時、第一課から第五課まであって、角田課長は薬物銃器対策を担当する「組織犯罪対策第五課」の課長になっています。

当時の組織犯罪対策部の編成は、次のような形でした。

【組織犯罪対策総務課】

 企画や会計などの管理部門、情報部門など

【組織犯罪対策第一課・第二課】

 国際犯罪対策

【組織犯罪対策第三課・第四課】

 暴力団対策

組織犯罪対策第五課

 薬物銃器対策

こうして見ると、第一課から五課のうち、角田課長以外は刑事部から移行してきているんだね

特命係とも仲良くできるし、源馬のような組織犯罪対策の他課長や伊丹たち刑事部ともうまくやれる。

そんな角田課長の器用なところは、組織上の自身の扱いがどんどん変わっていった時代を部下とともに柔軟に乗り越えてきたからかもしれないね

薬物銃器対策が組織犯罪対策に組み入れられた理由

この編成になる前までは、暴力団による事件の捜査は刑事部がやっていたんだよね?

そうそう

暴力団が絡む事件は刑事部だけど、薬物銃器に関する捜査や立件は生活安全部がそれぞれでやっている感じだったんだね

部が違うから業務を行うフロアも決裁のフローも違うだろうし、ここが二手に分かれていると、正直いろいろやりにくそう…

そうだね

そこが組織変更の一つの理由だったと見られる資料があるよ

実は同じころ、警察庁も組織変更をしているんだ

警視庁とほぼ同じ時期である2004年には警察庁においても、刑事局に組織犯罪対策部の設置が行われ、暴力団対策と薬物銃器対策の統一が行われています。

当時の警察白書(平成16年)では、暴力団犯罪を刑事部、薬物・銃器犯罪を生活安全部がそれぞれ担当している状況は好ましくないと受け取れる説明がなされており、これが組織犯罪対策部に統合された理由の一つといえるでしょう。

(参考)警察庁|警察白書(平成16年)

令和4年(2022年)4月~「組織犯罪対策部薬物銃器対策課長」

令和4年(2022年)の組織再編により、組織犯罪対策部では、それまでの第一課から第五課までの体制が廃止されました。

代わって新たに設置されたのが、「犯罪収益対策課」「国際犯罪対策課」「暴力団対策課」「薬物銃器対策課」です。

このうち犯罪収益対策課は、全国の警察で初めて設置された、マネーロンダリング捜査を担当する部署になります。従来、組織犯罪対策総務課に置かれていた「マネー・ローンダリング対策室」などを統合する形で新設されました。
それ以外の再編については、第一課と第二課が「国際犯罪対策課」、第三課と第四課が「暴力団対策課」、そして第五課が「薬物銃器対策課」へと引き継がれています。

というわけで、角田課長もseason21(2022年10月~)の公式サイトから「組織犯罪対策部薬物銃器対策課長」の表記になっているんだね

令和7年(2025年)10月~「刑事部薬物銃器対策課長」

令和7年(2025年)10月から警視庁組織犯罪対策部(ソタイ)は廃止され、「犯罪収益対策課」「国際犯罪対策課」「暴力団対策課」「薬物銃器対策課」はそれぞれは刑事部に統合されることとなります。

これにより、角田課長もseason24(2025年10月~)の公式サイトから「刑事部薬物銃器対策課長」の表記になっているんだね

同時に特殊詐欺を担当する「特別捜査課」が刑事部内に新設され、2026年春に発足される、全国の道府県警察から集めたチームとともに、特殊詐欺や闇バイト強盗などの事件捜査にあたる予定とされています。

あくまで警視庁だけの話であり、他の道府県警では「組織犯罪対策(ソタイ)」を冠する部署が、刑事部内の課や、独立した部などとして存続しています

まとめ

角田課長が所属する「組対(ソタイ)」は、『相棒』ではおなじみの存在ですが、その背景には、現実の警視庁における組織再編の様子が反映されてきました。
一方で、肩書や組織の名前は時代とともに変わっても、暴力団犯罪を憎み、薬物や銃器の情報から組織解明を目指す角田課長の立ち位置は、シリーズを通して変わっていません。

また、特命係と仲よくできるのも、自身が組織内であちこち動かされ、生活安全部から刑事部の中に放り込まれた時代を柔軟に乗り越えてきた角田課長ならではのバランス感覚があるからかもしれません。

この記事が、昔の角田課長の肩書を見て「ん?」となったときの参考になれば幸いです。