【相棒season1】第12話「特命係、最後の事件」がもう一度観たくなる!あらすじと見どころを解説

テレビドラマ「相棒season1」の第12話を解説します。

第12話「特命係、最後の事件」の概要

放送日

2002年12月25日

主な出演者

池脇千鶴 長門裕之 森本レオ 内藤剛志 川島宏知 高田裕司

相棒レギュラー

小野田官房長・美和子・たまき・伊丹・三浦・角田課長・米沢・内村刑事部長・中園参事官(てるお)

脚本

輿水泰弘

音楽・音楽監督

池頼広・義野裕明

監督

和泉聖治

「特命係、最後の事件」のあらすじ

場面は15年前の人質籠城事件。

外務省条約局長であった北条晴臣(ほうじょう・はるおみ:演・長門裕之)の公邸において、同人を含む外務省高官5名と公邸料理人1名の計6名が、犯人グループの人質となっていました。

そして隊員5名に突入命令が下され、邸内では、警察と犯人グループとの激しい銃撃戦が始まります。

結果、犯人グループのせん滅には成功しますが、隊員5名のうち3名、そして人質6名のうち1名が犠牲になってしまいました。

事件から15年後。

人質として生き残った者のうち3名が相次いで不審な死を遂げたことにより、再び事件が動き始めたことを察知した小野田官房長は、杉下右京(+亀山薫)を招集して捜査を開始します。

15年前の事件で無事に救出された北条晴臣は、すでに外務省を退官し、現在は大学生の川端蘭子(かわばた・らんこ:演・池脇千鶴)を自宅に住まわせ、悠々自適な暮らしを送っていました。

しかし、銃撃戦の悪夢で夜中に目が覚めた北条は、引き出しから一通の手紙を取り出します。

その手紙の差出人の名は、15年前の事件で人質として亡くなった、外務省高官・柳田幹夫(演・高田裕司)でした。

15年前の事件とは

今回の話は、前話からのつづきです。前話はタイトルでお察しのとおり、途中から15年前の捜査どころではなくなったのですが、今回はいよいよ15年前の事件真相が明らかになります。

15年前の事件、突入前に何があったのかは前話で明らかになっていますので、こちらの記事で解説しています。

「特命係、最後の事件」の見どころ

亀山君もスーツで参戦

今回の事件捜査のために警察庁に呼び戻された右京さん。

そして、その杉下右京と一緒に、亀山薫も警察庁で勤務することになります。

役職は「警察庁長官官房付き」です。

警察庁は全国の都道府県警察を指揮監督する立場にある機関ですから、亀山も張り切ったのか、いつものカジュアルなジャケットではなく黒色のスーツにネクタイを締めて出勤します。

小野田官房長の独特すぎる服装イジりが始まる

スーツ姿の亀山を見た小野田官房長の第一声は、杉下右京に「ほら、言ったとおりだろ?」というもの。

2人は、亀山薫がいつものスタイルで出勤するのか、それとも背広で出勤するのかで昼食をかけて勝負していました。

結果は、小野田官房長の勝ち。

少し残念そうな杉下右京に対して亀山薫は、「これは…一応礼儀っていいますか…」とよくわからない言い訳をさせられます。

普通ならこれで終わるのでしょうが、小野田官房長はさらに、亀山薫がスーツを着た心理を丁寧に分析します。

まず、杉下右京に対し、「わかってないなお前は、権威とはそういうものなんだよ。誰もが皆、無意識のうちに権威を敬い畏れる。その感情を責めたら酷だよ」と納得のいく(?)説明します。

そして亀山薫には「いつでもどこでも誰とでも、自分を貫くなんてそうそうできることじゃない。君はちっとも悪くありませんよ。」とフォロー(?)を入れます。

亀山君のばつが悪そうな、ちょっと泣きそうな表情を見ていると切なくなります。服装イジりは誰も幸せにならない行為です。

亀山薫の第六感が発動

15年前の事件で人質となったもののうち、現在も生存している者には、北条の他にもう一人、当時の公邸料理人・鈴原慶介(演・川島宏知)がいました。

特命係は、鈴原が経営するレストランを訪ねますが、インターホンを鳴らしても出て来ません。

2人は例によって裏口から勝手に入り込み鈴原を探しますが、どうやら留守のようです。

鈴原の帰りを待つことにした右京さんですが、亀山薫がふざけて厨房の冷凍庫を開けると、中から、凍り付いた鈴原の遺体が。

お見事です。思い出したように出る君のヤマ勘は、神がかりに近い」と杉下右京を感心させます。

「閣下」と呼ばないと話さない北条晴臣

北条晴臣は15年前の事件後、外務省条約局長→駐イラン大使→外務審議官→外務事務次官(トップ)→駐米大使(右京さんが言うには、退官前のお決まりの人事)という流れで退官し、現在に至ります。

すでに引退された身ではありますが、「閣下(かっか)」と呼ばない相手とは会話をしないという特性を持っています。

豆知識:閣下・陛下・殿下の違い

「閣下」とは、高位の外交官などに用いられる敬称です。

響きが似ている言葉に「陛下」や「殿下」がありますが、こちらはいずれも皇族に対する敬称になります。

「陛下」は天皇皇后両陛下に使われ、「殿下」は他の皇族に使われます。

北条閣下と川端蘭子の関係

川端蘭子は、北条閣下の屋敷に居候しながら大学に通う女性です。

特命係は、蘭子をカフェに誘い、閣下との関係を尋ねます。

蘭子の話では、所属するボランティア団体の支援者が北条閣下であったことを機に親しくなり、昨年の夏から閣下の屋敷に居候しているとのことでした。

驚くべきことに、蘭子は現在、衣食住の費用や学費などをすべて閣下から援助されているといいます。

しかも、北条閣下の妻はすでに亡くなっており、子ども達は海外暮らしをしている状態で、屋敷では閣下と2人で生活しています。

北条閣下との関係を探るように尋ねられると、蘭子はキレ気味に「は?」と反応するのですが、核心に触れようとすると意味深な表情を見せて、つかみどころがありません。

しかし、閣下が悪夢でうなされた後、汗をかいた背中を蘭子に拭かせるシーンがあるのですが、その時、閣下に手を握られながら蘭子は何か企んでいるような表情をしています。

また、右京さんの質問に対し、蘭子は幼いころに父を事故で、5年前に母を病気で亡くしたことを明かし、「不幸な家系なのかも知れない」と話します。

一体、蘭子の狙いは何なのでしょうか。

蘭子の正体が判明した時、事件が大きく動き始めます。

亀山薫、北条閣下を殴る

15年前、突入現場で本当は何があったのか、北条閣下の告白を聞いた亀山君は、北条閣下の頬にグーパンを一発お見舞いします。

杉下右京も咎める様子はありません。

北条閣下は、相棒屈指の胸糞権力者と言ってよいでしょう。

亀山薫は捜査一課復帰の便宜を図ってもらうのか

前回、亀山薫は、特命係が廃止された後の異動先について、小野田官房長に便宜を図ってもらうことを断ります。

しかし、運転免許試験場に行きたくない気持ちから考え直し、捜査一課に戻れるよう小野田官房長に口利きをお願いしてしまいます。

昔はカッコ悪く見えましたが、今はわかります。出世のチャンスは使ったほうがいいに決まっています。

と思ったら、最後は杉下右京と対立した小野田官房長に「運転免許試験場が俺を待っている」と言い、颯爽と部屋を出ていきます。

杉下右京VS小野田公顕 どちらが正しい?

相棒season1第12話の最大の見どころは、事件解決後のシーンです。

15年越しに明らかとなった北条閣下の罪について、杉下右京と小野田官房長の意見が真っ二つに割れます。

杉下右京は、北条閣下の罪は裁かれるべきだと主張します。

そもそも、今回の事件も15年前に然るべき捜査を警察がしなかったことが発端となっていますから、なおさら今ここで見過ごす選択肢は杉下右京にはありません。

これに対し、小野田官房長は、より多くの権力者の悪を暴くために北条閣下と取引をし、今回の件は目をつぶる方針を示します。

小野田官房長によれば「老い先短い老人を刑務所にぶち込むより、伏魔殿に風穴をあけるほうがいいでしょう」とのことです。

これにより、再び2人は対立します。

杉下右京の正義は公正な司法にあり、小野田官房長の正義は国益にあると表現することもできるかもしれません。

そして、どちらが正しいのか答えはありません。

ストーリーはもちろん小野田官房長の判断どおりに進むのですが、その是非は視聴者に委ねられます。

とは言え、この老い先短い老人season4でもう一波乱起こします。小野田官房長も、決して小さくないリスクを負って実行したはずのこのイリーガルな措置が果たして良かったのかどうか、きっと今でもわからないと思います。

そもそも今の北条閣下は裁けない

脅迫による自白は証拠になりません。また、脅迫がなかったとしても、刑事被告人にとって不利な証拠が本人の自白以外にない場合は、罪に問えないことになっています。(日本国憲法第38条第2項・第3項)

このことから、銃を突きつけられた状態による北条閣下の告白を証拠とすることはできません。また、仮にそれが証拠として認められたとしても、それ以外にも追加の物証や証言が無い限り、北条閣下を罪に問えないのです。

そのため、北条閣下を裁くには、15年前の証拠を新たに見つけなければなりません。

生前の鈴原を粘り強く説得すれば可能性はあったのかも知れませんが、今回の犯人にその時間は残されていませんでした…

小野田官房長のやり方もわかる…

今回の事件は、北条閣下の15年前の罪が見過ごされたことにより発生しました。

通常なら、ここまできて北条閣下の罪を問わないなどありえないことです。

特に杉下右京と亀山薫は、北条閣下を追い詰めようとした「2人」の想いを背負っています。

しかし、閣下を法で裁くにはまだ証拠が足りません。

裁けるかもわからない老人の捜査を続けるよりも、今回の事件を、権力者を裁く千載一隅のチャンスに変えて国益に繋げるべきとする、小野田官房長の正義も理解できます。

豆知識:なぜ外務省がこんなに悪者役なの?

今回、小野田官房長の言う「伏魔殿」とは、「外務省」のことです。

テレビドラマとは言え、一体なぜ特定の省庁を名指ししたのでしょうか。

確かなことはわかりませんが、この放送の前に発覚した、ある事件が関係しているのかも知れません。

season1の放送期間は、2002年10月からになります。

この前年、外務省の官僚による、巨額の機密費の流用事件が発覚しています。

推測ですが、もしかするとこの不祥事を受けての脚本だったのかも知れません。

この事件はWOWOWで「石つぶて~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~」でドラマ化されています。