【相棒season18】第12話「青木年男の受難」を解説

テレビドラマ「相棒season18」の第12話を解説します。

創作物における「◯◯の受難」とは、その人物が苦難を受けるストーリーです。「受難」はイエス・キリストの処刑の苦しみを表す語の翻訳としても用いられており、理不尽な苦痛を受け入れざるを得ない印象を受ける言葉です。

「青木年男の受難」の概要

放送日

2020年1月15日

主な出演者

中村優一 広田亮平 津村知与支 鈴木隆仁 小森敬仁 荒谷清水 黒石高大

相棒のレギュラー

杉下右京・冠城亘・伊丹憲一・芹沢慶二・角田六郎・青木年男・内村完爾・中園照生・土師太

脚本

児玉頼子

監督

杉山泰一

「青木年男の受難」のあらすじ

警視庁サイバーセキュリティ対策本部の土師太(松嶋亮太)が、「青木年男(浅利陽介)に返すよう頼まれた」と言い、杉下右京(水谷豊)に本を返しに来ます。しかし、杉下右京には貸した覚えがなく、青木に連絡を取ろうにも、無断欠勤をしているといいます。土師に青木の直近のログイン履歴を調べさせたところ、青木が少し前から警視庁のデータベースにアクセスし、神田北署の管内で起きた昨年の事件ファイルに何度も侵入を試みていることがわかりました。
さらに、青木の自宅付近に放置された青木の通勤カバンも見つかります。

杉下右京は、何者かが通勤途中の青木を拉致し、過去の事件情報を得ようとしているのではないかと推理します。
青木がさらわれた確定的な証拠はないものの、衣笠副総監のお気に入りである青木を放置するわけにいかないため、内村刑事部長(片桐竜次)は、とりあえず特命係と捜査一課の伊丹(川原和久)や芹沢(山中崇史)に、青木の捜索を秘密裏に開始させました。
特命係は、青木がアクセスしようとした捜査資料を閲覧するため、神田北署に出向きます。
理由をはっきり言わない特命係の様子を不審に思った刑事第1課の後藤係長(津村知与支)は、若手刑事の木村(中村優一)に、特命係が何を調べているのか見張るよう指示しました。
青木がアクセスしようとした事件は、昨年、後藤係長が担当した、金狼会の幹部・広瀬(小森敬仁)が、敵対する銀竜会の古参組員・相楽(荒谷清水)に刺された事件でした。広瀬は犯人の顔を見ていませんが、後に相楽が犯行に使用した刃物を持参して自ら出頭したことで、事件は解決しています。

ところが、特命係に同行していた木村の話によれば、相楽は身代わり出頭のおそれがありました。木村後藤係長に報告したのですが、話を聞いてもらえなかったといいます。
すると、青木が今度は別の事件のファイルにアクセスを始めました。
その事件とは、同じ神田北署の、相楽の事件の少し前に発生した、会社員が階段を駆け上がる途中に、前を歩いていた男性を押しのけ、転落死させた重過失致死事件でした。犯人の狙いがわからないまま、特命係はこの事件も調べ始めます。するとこちらの事件も後藤係長の担当事件であり、しかも冤罪の可能性があるという「共通点」が見つかります。

「青木年男の受難」の見どころ

【悲報】青木、誰からも心配されない

ピンチになった時、普段その人が周囲にどう思われているかわかることがあります。

今回、青木年男が行方不明になり、しかも何者かに拉致された可能性が高いのですが、それを知った相棒レギュラーの様子が描かれています。

同僚・土師太の場合

同僚である青木が初めて無断欠勤をし、不審な連絡を寄こしたのですが、土師太は特に心配していない様子です。

青木の振る舞いを不審に思った特命係が捜査を依頼しても「嫌ですよ、なんで僕が青木のために」と協力を拒否します。

冠城亘が「青木ならこの程度のことちゃっちゃと調べてくれるけど、君には無理か」と挑発したことで、ようやく協力しますが、これは青木より下に見られたくないだけです。

なお、この時、拉致された青木は、捜査ファイルにアクセスするためのパスワード解析に手間取っているフリをして救助までの時間稼ぎをしています。

青木が何度もログインに失敗している様子をログから読み取った土師太は、それを青木の能力が低いからだと決めつけ、「僕ならすぐにやれる」と嬉しそうに特命係に説明します。

どうやったらここまで心配されないんだ…

ものすごく嫌われているんでしょうね…

刑事部の場合

内村部長と中園参事官は、とりあえず青木がアクセスしようとしているデータの漏洩は心配していますが、青木自身を気にかける様子は特にありません。

しかも中園参事官は「青木の性格なら自分の身を守るために警察の情報をほいほい渡す」と言い、それに伊丹と芹沢も同調します。

青木がそもそも信用されていない!

さらに中園参事官は、青木の通勤路で発見された青木の通勤カバンにゲーム雑誌が入っていることを確認し、「あいつは何をしに(職場に)来ているんだ」と文句を言うくらいには余裕があります。

青木がかわいそうになるくらい緊張感がない…

冠城亘が「(青木を気に入っている)衣笠副総監にそんな不手際を知られたらどうなるか」「身内を見殺しにしたとなればマスコミの餌食になる」と誘導して、ようやく内村部長が「青木を救出しろ」と指示します。

特命係の場合

特命係だけは、初動から一貫して青木救出に向けて動いており、最終的には、杉下右京のアイデアで青木のパソコンにウイルスを送りつけて位置情報を把握し、監禁場所の特定を試みます。

杉下右京の頼みで土師太がウイルスを作成して青木に送信し、それによって青木は無事に救出されます。

ところが後日、特命係にやって来た青木は怒っており、「本当はもっと早い段階で思いついていたのではないか」と杉下右京に疑念をぶつけます。

杉下右京は「それだと事件の真相を明らかにできないから」と、青木の命よりも事件の真相解明を優先していたことを認めます

杉下右京の場合、青木よりも事件のほうに興味があったのです。

また青木が歪んでいく…

青木年男、制作者にも心配されていない?

杉下右京の奇策により無事に発見された青木ですが、思いのほか元気そうな姿を見て「わりと早く助けられたのかな」と感じた方も多いのではないでしょうか。

しかし、救出直後の青木は「ずっとロクに寝ていない」と話してそのまま床で寝てしまうほど疲弊しており、実際は何日監禁されていたのか気になるところです。

そこで、青木の拉致被害が判明した日から、杉下右京のネクタイが何回変わるかを数えてみました。

すると、青木の拉致が判明した日から青木が救出される日までの杉下右京のネクタイはなんと4回変わっていました!

・(初日)エンジ色のストライプ

 ↓

・紺色の水玉

 ↓

・赤色の水玉

 ↓

・ワインレッドのストライプ

 ↓

・(救出当日)パープルのストライプ

つまり、青木が救出されたのは、拉致されてから5日目であると推測できます。

みんな青木をもっと心配してあげて・・・

その間、青木は犯人に脅されながらロクに睡眠をとらず、強靭な精神で耐え抜いたことになります。

ちなみに監禁中の青木は、足首をロープで縛られナイフを突きつけられており、決して楽な状態ではありませんでした。

これはもうドラマ制作者の誰も青木を心配してなくて5日間の監禁になっていることに気づいていない説があると思います

青木の私物の本の謎

青木年男が杉下右京に助けを求めるため、土師太に依頼して杉下右京に渡した本は「蟻地獄図鑑」です。

タイトル上部に「自然を知ろう10」と書かれているため、生き物図鑑のシリーズの一冊と思われます。

事前に仕込めるような状況ではなかったため、この本は囚われた青木年男の状況を伝えるものではなく、単純に青木の私物であると考えられます。

土師太の活躍回

土師太の活躍が見られる回です。

青木年男より劣っていると思われたくないという歪んだ動機ではありますが、持ち前の技術で特命係の調査に協力します。

さらに、杉下右京(水谷豊)に「君が青木を救うことになるかもしれない」とおだてられ、パソコンの位置情報を取得するウイルスを作成し、それを青木に送りつけて監禁場所を特定するなど、捜査に大いに貢献しています。

サイバー捜査に関する技術は本当にすごいんだろうな

青木年男、やはり有能

人格面としての評判は今ひとつな青木年男ですが、判断力や実行力はかなり高く、そのことが改めて確認できる回となりました。

怪しまれずにSOSを送る

杉下右京に借りてもいない本を返すという、犯人にはギリギリ怪しまれず、かつ、杉下右京には動いてもらえる内容で連絡をしてSOSを送るという、高度な対応を行っています。

なお(中園参事官たちの想像ですが)犯人に対し「どうしても今日中に本を返したい人がいる、返さなければ大変なことになる」というよくわからない話をいつものようにまくしたてて実行したようです。

救出までの時間稼ぎをする

青木は、犯人に従うフリをしながら、事件ファイルへのアクセスにわざと失敗し続け、与えられた制限時間を巧みに引き延ばしています。

しかも監禁された期間は5日間ですから、超人的な精神力です。

犯人の動機について

この項は「青木年男の受難」の重要なネタバレを含みます

犯人は、神田北署・後藤係長が担当した事件に疑問を抱く2人の人物でした。

青木がターゲットにされた理由は、警視庁のデータベースへのアクセス権限があるからであり、青木に恨みがあったわけではありません。

手段を選ばない方法ではありましたが、犯人の1人の想いは遂げられ、銀竜会の相楽が身代わり出頭であり、冤罪であったことが明らかになります。

冤罪の原因は、後藤係長一人にあったわけではなく、キャリア官僚である梅本署長の、効率を重視した捜査指揮もあってのことでした。